フリーマガジン 『Rino』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


年々、愛妻の小言に磨きがかかっている。「反論があるなら言いなさいよ」はワナである。

 全日本小言(こごと)選手権があれば、迷わず愛妻をエントリーさせたい。国内でも3位迄には喰い込む力があると思う(笑)。とにかくしゃべる。機関銃のように。おかげで当方も一流の歌舞伎役者のような表情を習得できた。真剣な顔をして聞いていないと、小言の時間が長くなるばかりだからだ。必然的に困った顔、驚いた顔、反省している顔、否定する顔が大げさになった。虚ろな顔やウザイ顔を一瞬でも見せれば、「あなたはちっともわかっていないっ!」と間髪を入れず突っ込まれる。だからこそ、後方の座席からでも見える大袈裟な顔と所作が必要になってきたのだ。
しかも、今日の体たらくを怒られていると思いきや、10年も前の出来事、どころか娘が誕生した頃の話へと遡っていく。どうやら、常日頃から私のやらかした事を時系列に整理しているようで、寸分違わなぬ記憶力には脱帽である。
 そこで愛妻の小言にはあいづちを三つと決めている。「そうだね」「わかるよ」「そのとおり」これ以外の言葉は全く必要がない(笑)。時折り、「反論があるならいいなさいよ!」と弁明の機会が与えられるが、それがクセモノで、ワナでもある。「じゃ、言わせてもらうよ」には、「じゃあ、言わせてもらうよって何よ!」と、言葉を遮られ、結局小言が始まるのだ。そこでわかった。ただ単に、自分の呼吸を整える為のフリであったのだ。したがって、「何もございません」だけが正解である事を悟ったのだ。
 亭主諸君。くれぐれもご自愛召されい。良いお年を。



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