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ダーウィンは動物の進化論を発表したが、天野は愛妻の進化論を発表したのだ。

 ダーウィンは動物の進化論を発表したが、不肖天野は愛妻の進化論を長きに渡って研究発表している。例えば亭主の呼び方の進化。結婚した当初は、「あなた〜ん」。しかも鼻にかかっていて、「かわいいのう」となった。5年経つと「あなたッ!」語尾が短くなり、小さなッが入ってきた。10年経てば、「あんたッ!」「な」が「ん」になっていて、少し恐くなってくる。ところが、どうにか呼ばれている感はあったものだ。問題は15年から先である。「ちょっと!ちょっと!」である。電車のキップを急いで買おうと、知らずに割り込んだ時に、他人から言われるあれである。20年経てば、「ほら、ほら」たぶん亭主の名前も忘れているが、ペットが何かやらかした時のそれである。しかし、これも幸せのうちだ。まだ声が出ているではないか。
かくして今では手招きである。
 最近わかったが、手の甲が上で、クイクイッと指を下に手招きされるのは、「ちょっと来て」であり、手の甲が下で、指をクイックイッとされるのは「またやらかしたわね、ちこう寄れ」の意味だった(笑)。わからないのが、腕を伸ばして、手の平を縦にされ、指を左右に振られる時である。近づいていいものか、ところ払いをされているのか、はたまた、向こうが見えないからズレろとおっしゃっているのか、聞くに聞けない困った手振りだ。当方もボクサーのように上半身を左右に動かす事になる。
 晩酌をされ、機嫌の良い時にそっと聞いたら実にシンプルな答えだった。「じゃま」。なるほど「じゃま」だったのか。ああーすっきりした。ってそこじゃないよね(笑)。



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