フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


女のダイエットの話に男は決して近づいてはいけない。

 ほんの一杯のワインで頬を赤らめていた愛妻が、いつの間にかビールを水と呼び、日本酒をご飯と言うようになったのはいかんともしがたい。ほろ酔い気分になると言葉にトゲと毒が入り、「私は酔っていない」と必ず否定するのが酔ってきた証拠であろう。
 さて、夕食を終え、静かに本を読んでいる私に、「ちょっとこっちへ、もっとちこうへ」と手招きするのが日課になった。大抵の場合、「あのさぁ、気に入らないのよねぇ」から始まり、「もういいわよ、あなたはちっとも分かっていないんだから」で終わるようだ。その場合の合いの手が最も難しく、細心の注意を払わなければ家庭内生存率が下がる要因になるのだ。
 新!亭主関白道の五段を持つ私は、「まじ、てか、だよネ」の法則を熟知しており、ことなきを得ているから心配御無用である。話の最初には、さも共感しているように、「まじー」と相づちを入れ、中盤には、「てか」を入れさえすれば話が転んでいく。この話はもう終わりに近付いているな、と思う終盤には「だよネ」で締めればいいだけだ。
 ところが大失態を犯してしまった。今、書き上げている本の構想を練りながら聞いていたのがまずかった。
「私も年をとったけど、まだ若いと思ってんのよねぇ」
「まじー」「ん?」
「最近、二重顎になってない」
「てか」「はぁ?」
「お腹の肉タプタプでしょ」
「だよネ」「なにぃ」
 とんでもないところに、相づちを打ってしまったものだ。みるみるうちに機嫌が悪くなり、どうやら時限爆弾のスイッチを押したも同然の状態である。「私がこんなに努力してんのに、あなたはちっとも分かっていない」。出ました、ちっとも分かっていない攻撃。これが出れば、「もう寝るっ!」が近いはずだ。うれしいー。って今夜は終わらないよー。エスカレートしてるじゃないか。かくして、またひとつ学ばせて頂いた。女のダイエットに関する話には、亭主は近付かない方がいいようである。全亭協6千人の会員諸君、くれぐれも用心召されい。



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