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愛の三原則の中に、「ごめんなさい」を恐れずに言おう、とある。 ところが、第百七回、全亭協の月例会において、入会したての会員が、「会長、いつもごめんなさい、を言っているせいか効き目がだんだんなくなっています」と真顔で訴えてきた。なるほど一理ある。確かにそういうケースがなきにしもあらずだ。女性は、「いつもごめんなさい、ばっかり言って!ごめんですむと思ってるのっ」と反撃してくる場合もあるのだ。残念ではあるが、質問者は所詮、二段クラスである。そんな悩みでモンモンとしていたとは。 思い起こせば、全国亭主関白協会を設立して9年の歳月が流れた。私はまだ五段ではあるが、全国津々浦々、五千人以上の会員を束ねる会長である。「そんなことは簡単明瞭ではないか…」会合に集まった30人程の会員は居住まいを正し、ある者はメモ帳を用意し、ある者は真剣な眼差しで私の次の言葉を待っている。天野となかなか会えない若い会員達は、私の言葉を一言一句聞きもらすまいと水を打ったような静寂が場を覆っている。おもむろに口を開く。「ごめんなさいの効力がないと思った時は…」、会員のツバを飲み込む音が聞こえる。最古参の内田六段が、後を続ける。「さあ、皆さん。静かにっ。会長の至言が飛び出します。ごめんなさいが通用しなくなった時は…。どうぞ、会長」「その時は…」全員が固唾を呑む。「重ねて、申し訳ございません、と言うべきじゃないだろうか」。一同シーン。その後、飲んだビールをプーッと吹き出す者、後ろの壁に頭を打ちつけるもの。メモ帳をたたみ、帰り支度を始める会員まで出る始末であった。
「亭主はどれ程弱くなればいいのかしらん」と件の質問者が首をうなだれた瞬間、板橋十段が重い口を聞いた。「戦わずして負ける。さすが会長、奥が深い」。ナイスフォローであった。全員が大笑いして、拍手喝采。こうして重要な会合が無事過ぎていく。で、またまた、午前様になった。「毎日、毎日、どこほっつき歩いているの、いい歳して!」この言い回しは、シャイな愛妻の「お帰りなさい」なのだ。「重ねて、申し訳ございません」これで一応玄関には入れてもらえるはずだ。
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