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全国亭主関白協会は、とうとう会員が五千人を突破してしまった。会長職としての責任が重くなり、午前様が続いている。こうなると要注意である。無用な争いを避けるため、家中の電気が消えているかどうかを確認して玄関に辿り着くのが賢明だ。「ホッ、消えてるよ」なぜ、「ホッ」なのかわからないが、とりあえず「ホッ」なのだ。 が、会長ともなれば決して油断をしない。玄関の鍵の音にも細心の注意を払っている。カチャリ、で起きられたら、元も子もない。「新!亭主関白道」の段位の低いものはここで電気をつけたりするが、私のような五段以上は電気もつけない。真っ暗闇の中を、まるでこうもりのように、書斎に辿り着くのだ。 が、リビングを通らねばならないのが至難のワザで、テーブルや椅子の足角に小指を思い切りぶつけたりするから油断大敵だ。万が一、小指をぶつけた場合、「ウァオッ」と言う声が出る前に、両手で口をふさがねばならない。滅多なことで涙を流すことはないが、これは痛い。思いっきり痛い。暗闇の中で何度嗚咽を漏らしたことか。それでも決して声を漏らしてはいけない。
が、昨夜の出来事は記憶からぬぐい去りたい出来事だった。時計を見れば、午前3時。もはや何の言い訳もきかない時間であろう。いつものように暗闇の中を、すり足で進んでいった。リビングさえ通り抜ければ安らぎの時間である。テーブルや、椅子の位置に目を凝らして確認しつつ、もう少しで「ホッ」であった。ところが、真っ暗闇の椅子に、人が座っているような黒い影が見えるのだ。「いや待てよ、こんな時間に?」今日はいささか酔ってしまった。目をゴシゴシと2、3回こすって見る。すると、突然、「なんなのよ、あなた!」心臓が口から飛び出したが、「なんなのよって、キミこそなんなんだよ」「なんなのよ」「なんなんだよ」の無意味な問答が暗闇の中で十数回続いた。「のどが渇いたからお茶飲んでただけよ!」「…」「まるでこそドロじゃない。毎晩毎晩どこ、ほっつき歩いてんのよ」「屋台です。屋台なんです。キャバクラは閉まってます」 もはや、何を言っているのかさえわからない状態ではあった。というわけで、通販で赤外線フィルター付きメガネを購入しよーっと。
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