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愛妻は、私が本を出そうが、その本がテレビドラマになろうが、ましてそのドラマにこっそり出演していようが、とんと興味がないらしい。 そんなことより、服を脱ぎ散らかす、ご飯を食べ散らかす、オシッコを飛び散らかす、ことなどがどうにも我慢ならぬと、いきなり背後から、「何度言ったら分かるのよ」とカミナリを落とすことが、重要なのだ。驚くべきは、さっきまでキッチンにいたはずなのに、なんでトイレで用を足している私の背中を、「一歩前へ」と突き押せるのだろうか。 昨日などは心臓が止まるかと思った。寝ぼけまなこで歯を磨こうと、歯磨き粉のチューブを押してもひと欠片も出ない。切れているのだ。「確か新しいヤツはこの引き出しにあったよナ」と、真新しい歯磨き粉のフタを開けようとしたその瞬間、「ちょっと待ったぁ」と、やはりすぐ後ろに立っていた。確か、まだベットにいたはずだ。「何、もったいないことすんのよ、まだ、タップリ入ってんのよ」と言う。私は驚いた。何度押しても出てこなかった歯磨き粉が、愛妻が赤鬼のような形相で絞るとニュルニュルと出てきたのである。「ったくもう、あと数回は使えるからネ!」と去っていく。私に何か恨みでもあるのだろうか。
そして今朝である。言いつけを守って、歯磨き粉のチューブを力任せに押し潰したが、もう、ウンともスンとも出やしない。こんなに努力をしたんだから許されるだろうと、ゴミ箱にポンと捨てたその刹那。またしても後ろに立っていた。しかも、ハサミを手に。短い人生だった。まさか歯磨き粉を勝手に新品に換えただけで…。もはや観念し、目を閉じた。ところが、ゴミ箱から拾い出したチューブをいきなり切り始めた。手に持っていたハブラシを取り上げ、直にこすりつけると、確かに歯ブラシの上には歯磨き粉が乗っている。そして勝ち誇ったように「ホラ、ネ」とウィンクして去っていった。 亭主諸君、教訓である。男の、「もう、ない」は、女の「まだ、ある」と同義語で、ケチではなく、節約だ。その証拠に自分のブランド品は増えているではないか。
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