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家事の手伝いをしていると、必ず良いことがある。

 夫婦生活は、妻の思い込みと誤解、そして妄想によって成り立っているのではなかろうか。特に、亭主の浮気に対する疑いはその傾向が強く、本人も気付かないような小さな現象をとらえ、罵られる場合があるから、十分気をつけねばならない。
 つい先日も風呂に入ろうとした瞬間、「パンツが裏返しになっている」と鬼の首をとったような大騒ぎである。やましいことなど、これっぽっちもないが、「ちょっとあなたっ!」と真後ろから大声を出されれば、「ヒェッ」となるのは必然で、あたかも高速道路を走っている時、覆面パトカーが、真後ろからいきなり「ウォーン」とサイレンを鳴らす瞬間のようなものである。いや、この例えは悪かった。スピード違反は交通法規を違反しているのだから当方が悪いのだが、パンツ裏返し事件は完全な濡れ衣である。本件は、って、ひとり弁護士状態ではあるが、状況証拠のみであるからして、疑わしきは罰せず、ではなかろうか。
 ひるがえってスピード違反は、何キロオーバーか、パトカーのメーターが動かぬ証拠となるわけで、言い訳はきかない。ところが、パンツが裏返しになっていた理由は、最初から裏返しに穿いていたことに他ならないのである。愛妻の「自分が、洗濯物を裏返しにたたむわけがない」の思い込みと、数十年前の前歴による誤解が生んだ妄想に他ならないのだ。
「最初から裏返しだ」
「いや、そんなわけがない」
の応酬が30分ほど続いたが、ふと思い付いた。いや、思い出した。
「僕が悪かった」
「やっぱり浮気ネッ」
「いや、違う。そのパンツは僕がたたんだものだ。君に何の罪もない。いや、参ったナ」
「そうでしょ、私が裏返しにたたむはずがないじゃないっ」
かくしてパンツ裏返し事件は事なきを得たのだった。愛妻の思い込みと誤解に対抗するには問題のすり替えと話題の転換が一番なのである。ホッ、命拾いな一日であった。亭主諸君、ゴミ出し、風呂掃除は言うに及ばず、洗濯物は率先してたたむようにしておこう。



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