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女は小言の名人である。が、その処理を間違えると大事になるから要注意だ。
今朝もそうだった。朝ご飯が終わって口を拭こうとティッシュを取った。シュッシュッ。「何べん言ったら分かるの、ティッシュは一枚にしてよ!」理由は分からないが、つい、2枚取るクセがあるらしい。「てか、いいだろ、ティッシュぐらいのことで」これがいけなかった。全亭協の「妻の尻に上手に敷かれる心とワザ」第75条の3項を忘れていた。「愛妻の小言に反論したら、大事になる」だ。時、すでに遅し。「あなたはちっともわかっていない…」そう、「あなたはちっとも」攻撃である。それに続くのは決まっている。「私がどれだけ…」攻撃なのだ。そして終わりのないフレーズが用意されている。
「あの時だってそうよ…」攻撃だ。ティッシュを2枚取ったばかりに、25年程前の浮気にワープしていくのだ。つまり、原因は一本の木であったが、反論すればいつの間にかジャングルのような深い森に入っていく。こうなれば出口がわからなくなるばかりか、1時間の絨毯爆撃である。ダイニングから書斎に避難するタイミングを完全に絶たれる。あとは、通販を運んでくる運送業者が来るのを待つか、近所の奥様が、新しいダイエットの方法を見つけた、と電話がかかってくるのを待つしかない。「ピンポーン」「あら、もうこんな時間、ハーイ」今までの小言は何だったのか的、笑顔で玄関へ。そのスキを見計らって、ようやく避難することが出来た私は、生まれて初めて愛妻に復讐を誓った。
「たかがティッシュぐらいでグダグダと。思い知らせてやる!」その機会は意外と早くやってきた。午後から友人と映画を観て夕食をしてくると言う。「じゃあ、行ってくるね」「うん、行ってらっしゃい。楽しんでくるといい」今日は夜まで帰ってこない。夕食はペペロンチーノでも作るか。小説すばるに載せる姫野カオルコの新作「ああ、正妻」の書評も書かなければいけない。復讐は今日決行する。夕食を食べ終わった後…。ティッシュを思いっきり10枚程引き抜いて、「ハイ奥様、これがティッシュの正しい使い方でーす。ヤーイ、ヤーイ」。完全犯罪である(笑)。
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