フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


 臨死体験をした亭主は星の数ほどいるはずだ。

 ポルターガイスト現象のあとに臨死体験の話もなんだが、事実だから仕方がない。私は無地の下着しか履かない。が、「知らぬ間に、柄物のパンツを履いていた」事件が起きてしまったのである。このイリュージョンにはタネも仕掛けもあるのだが、おかげで臨死体験を味わう羽目になったのだ。
 某日、仕事も終わり家に辿り着き、リラックスしようと上着を脱ぎ、スラックスを脱いだ瞬間だった。「ちょっとあなた!」いつもと違う物凄い剣幕に、ビクッ。「何よ、そのパンツ」理由も分からず下半身に目をやると、見たこともないような派手な模様がついているトランクスではないか。頭は真っ白、顔面蒼白。メドゥーサに睨まれた者は石になるという神話があるが、身動きが全くとれない。膝下で止まったスラックス、馬車なのか、星だったのか、模様が何であるかは今でも思い出せない。はっきり言えることは、その時、死にかかった、いや、確かに死んだ、ということである。
 脳裏にはスローモーションで人生がフラッシュバックしていく。披露宴で、白いタキシードに身を包んだ私が、愛妻の腰に手を回しながらケーキをカットしている。アハハ…。ウフフ…顔を見合わせながら満面の笑み。
 かと思えば、馬乗りで、首を締められながら、「こらあ、白状せい!」鬼のような形相の愛妻の顔が畳一畳の大きさで迫ってくる。「助けてくれー」声を出そうとした瞬間、「ハッピーバースディトゥーユー、ハッピーバースディ、ディアパーパ…」幸せに包まれ蝋燭を吹き消そうとしているシーン。次から次に、まるで走馬灯のように様々な映像が頭を駆け巡っていく。その間、ほんの数10秒だったに違いないが、確かに結婚して25年の歴史を振り返ったのだ。
 午前中、全身のデトックスの体験取材で、エステサロンに行った。ビショビショになった下着では不快だろうと、お店の先生が、これを履いて下さいと気を利かせて頂いたのだった。すっかり忘れていただけだったが、愛妻の「何よ!そのパンツ」で、意識が飛んでしまったに違いない。全亭協の会長がこの程度だから、会員は推して知るべしか(笑)。



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