フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


 ほとんどの亭主はポルターガイストが起こる家に住んでいる。

ポルターガイスト現象をご存知だろうか。どこからともなく聞こえてくる不気味な音。部屋の中のあらゆる物が空中に浮かんでいる状況だ。
 大きな声では言えないが、私はそんな家に住んでいる。早急に徳の高いお坊さんにお祓いをお願いしなければならない。始めの頃は、枕やトースト、プラスチック製のコップなど比較的軽い物が空中を飛んでいた。最近では、イス、アイロン台、掃除機の柄など、重い物が空中を浮遊している。特に、酔って午前2時過ぎに帰ると、よりひどくなることが分かってきた。
 玄関先で呼吸を整え、静かに、静かに家に入り、リビングを通り抜ける。私の部屋まであと10歩だ。
「ちょっとあなたっ」
不気味なラップ現象が始まった。
「落ち着きたまえ、今夜は会合だ。件のお店ではない。それにあのメールは誤解です」
空中を浮遊する物を避けながら、後ずさりをするが、避けきれない。こうなれば、一番被害の少なそうな物に当って、バタッと倒れ込む以外に方法はない。熊に襲われた猟師が使う、死んだフリである。目覚まし時計が飛んできた。
「これだ!」(笑)
手の甲に思いっきり当たったが
「ウッー」
「あなた!あなた!大丈夫」
「もう死んだかも知れない、意識が遠のいていく…」
かくしてポルターガイストは収まった。全亭協会長として、不要なメールはすぐ消すようにと指導してきたが、「お寿司ごちそう様でした・天ちゃんへ」(飲み屋さんでは、なぜか天(あま)ちゃんと呼ばれている)を消し忘れ、2、3日前に発見されていたのだった。すべて愛妻の妄想であり、誤解であるが、李下に冠をたださずである。そんなこんなで今日も家に帰るのが恐い。



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