フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


 女は、ビール缶を死んでも離さない。キッチンドランカーになるはずである。

 理由はわからないが、女はビールを好いている。料理を作っている最中も、夕食を食べている時も、風呂からあがった時も、テレビを見ている時も、左手に缶ビールがこびりついている。

 あたかも死んでも離さない進軍ラッパのように。

 日本酒や焼酎やウイスキーでは、さすがにラッパ飲みができないからだろう、と推測してはいる。

 それはもう、仕方のないことだが、飲み終わった後のひしゃげた缶が累々とベランダに貯まっていくのはいかがなものか。風の強い日には、「カンカラカン、コンコラコン」と音がして薄気味悪いではないか。

 「少しはセーブしたらどうかね」

 と恐る恐る切り出すと、

 「そんなに飲んでないっ」

 と必ず逆襲される羽目になる。たいていの場合

 「こんな小さなヤツを3本だけ」

 と手の平で幅を指し示すが、

 「それは世間ではロング缶というんだよ」 「フーン」。

 全国亭主関白協会では「フーン」が出た場合、大至急、書斎に避難した方がいいとマニュアル化されている。

 「フーン」の後には「じゃ、言わせてもらいますけど」がセットになっているからである。全亭協のデーター(4名に聞いただけ)では、愛妻のキッチンドランカー度は100%とされており、その原因の75%は亭主に原因があるという結論が導き出されている。

 キッチンドランカーに対抗する為には、ハグ(抱擁)が効くと誰かが推奨したため、実践することにした。

 「ただいま」

 ギュッと抱きしめて「愛してるよっ」。

 寝る前にはギュッと抱きしめて、

 「おやすみ」。

 夜の場合は、誤解されると、とんでもないことになるので、あまりきつく抱かない方がいいという噂があることも付け加えておこう。

 血の滲むような?努力の結果、驚く事に、いつの間にかロング缶がレギュラーサイズに変わっていたのである。ハグ恐るべし。

 ベランダに出てみたら、缶の数が倍近くになっているように感じたのはきっと気のせいだろう。



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