フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


 女の「あら?!そう」を軽くみてはいけない「争う!」と言っているようなものだ。

 男が決して忘れてはならない記念日が二つある。

 結婚記念日と愛妻の誕生日だ。

 この日を忘れるとエビフライが空を飛ぶことになる。近所の花屋さんでバラを注文し、最高級のシャンパンを買って帰ろう。バラの本数が増え続け、両手で持つのもひと苦労だが、大切な行事だ。

 たいていの場合、この日から一週間は機嫌が良く、普段ならケンカの原因になるようなことでも、見逃してくれる場合もある。

 が、魔法の期限はあくまでも一週間であることを肝に命じておこう。「いかん、携帯を忘れた」気付いたのは会社に着いてからだった。やましいことはないが、なぜか冷や汗が出る。救いは、愛妻の誕生日が一週間前だったこと。「魔法はまだ切れてはいないはず」

 勇気をふりしぼって電話をしてみよう。「エヘッアハッ携帯忘れてるっぽい、みたいな」何を言ってるのか自分でも理解不能だが、返ってきたのは、「あら?!そう」である。女の「あら?!そう」はいけない。「そう?」だけでも恐ろしい含みがあるが、「そう」を一層強調する「あら」が付いているのだ。今夜はまっすぐ帰れない。

 賢明な読者の方ならおわかりだろう。女の「あら?!そう」は、「争う!」と一緒で、宣戦布告に近いものがある。敵は、キャバ嬢とのメールのやりとりを必ずチェックしているだろう。

 朦朧とする意識の中で、メールの内容を思い出す。「なんてことはない、たわいのない会話じゃないか」よし、思い切って玄関のドアを開けるぞ!真っ暗だ。「寝てるよ、寝てる。ホッ」リビングの明かりをつけてみる。テーブルの上に携帯電話とはしり書きのメモ。

 「ミカちゃんとやらによろしく」昨日までピンピンしていたバラの花は花瓶の中で、全員うなだれている。

 魔法の期限が一週間である理由が分かった。バラがしおれる期限だったのだ。今夜はソファーで寝るのが正解だろう。トホホ。



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