フリーマガジン 『リセット』 で大人気連載中の会長執筆のコラムをご紹介いたします。


 女の悩みを聞かされること、それが男の最大の悩みである。

 女から悩みを打ち明けられた時、決して答を出してはいけない。全てを曖昧にすることが延命の道である。このことは全国亭主関白協会では定説になっている。特に嫁姑の問題は複雑で、どちら側に立っても罪をつくる。女の悩みには正解がないのに、分かった風な答を出してアバラ骨にヒビが入った男もいるのだ。

 関白道の高段者は、ヤングギャルの生態をよく観察しており、彼女達の使う言葉に着目している。「ウッソー」「ヤダー」「マジ」「ていうか」この4つの言葉こそ、あらゆる難局を乗り切るキーワードであることを発見した。「ちょっと相談があるんだけど…」きたきた。話の中身は一切聞く必要はない。「ウッソー」「マジ?」「ヤダー」「ていうか…」をどこに挿入するかだけを考えればいい。相槌を打つタイミングを間違えると、大変なことになるからである。要は、真剣に聞いているよ、的空気感。私は君の味方じゃないかの風味つけ、そして、その答は君が決めるべきだよみたいな仕上げが必要なのだ。つまり、女は悩みの答を聞きたがっているのではなく、悩みをしゃべりたいだけであることを解明したからである。

 関白道の八段を持つ全亭協の会員は、「ていうか、マジ?」などとギャル語の複合変化技もマスターしており、このセリフだけで、愛妻の1時間近くの悩みを聞いてやり、かつ、「ああ、すっきりした、相談してよかったわ」。と感謝された実績を持つ。その間、何ひとつ決断めいたアドバイスをせず、問題を曖昧にしたままとは、さすがである。誤解を招くと困るから言わせてもらうなら、嫁姑の問題に結論を出すと、必ずどちらか一方を追い詰めることになるからだ。天野周一ほどの達人になれば、愛妻とは決して約束をしないことにしている。「今度の連休、旅行に行かない?」「ていうか、行けたらいいね〜」行くとも行かないともつかない返答だが、これが大正解で、運良く行けたら大喜び、行けなくても無用な喧嘩にならないのである。何しろ、約束はしていないっ。

 「私の事、愛してる?」「ていうか、愛してたらいいね〜」「私がもし先に逝ったら、どうするの…」「ていうか、先に逝ったらいいねぇ〜」夕食の予定は上海ガニと聞いていたが、いつのまにかモヤシいためになっていた。ウッソー、愛妻マジギレ。しっかりしろ、自分。



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