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娘がいつの間にか大きくなっていた。「結婚する」という。「勝手にしなさい」と言った。一週間、口を聞かなかった。我が家には気まずい日々が流れていく。私の心に小さな穴が空いたらしい。この穴を埋めるには時間だけなのだ・・・。
ドアの向こうでは笑い声が聞こえるが、書斎に掛かっている時計の針の音が心に染みてくる。 小さい頃、高熱を出すのは決まって病院が休みの日曜の夜だった。原因は風邪だとわかっていても、先生から「ただの風邪ですよ」と聞くまでは安心できなかった。 高校受験の発表の日、おまえの番号を見つけた時、思わず小さくジャンプしてしまったよ。アルバムをそろりめくっていくと、いつだって笑顔でピースサインだナ。
一緒にお風呂に入っていたあの頃「パパが一番スキ、大きくなったらパパのお嫁さんになる」って言ってたんだゾ。娘は確かに成長しているが、わたしの心はまだ時間旅行から戻れない。が時は残酷なほど正確な早さで過ぎ去っていく。「過去を振り返るな、前向きに生きろ」とあれほど言ってきた私が一番過去に捕らわれていた。
昔も今もたいした力のない私が、娘にしてやれることはいつも祈ることだけだった。そんな私にまた祈らせるのかい。「何の取り柄もない娘をどうか幸せにしてやって下さい」と。「娘よ、楽しい思い出をありがとう、幸せになるんだよ」とようやくタイムトリップから生還した気がした。
父親が結婚式で泣くのは悲しいからでも、また嬉しいからでもなく、二度と娘と旅立つことのできない時間旅行との決別の涙かもしれない。それにしてもこのウィスキーはやけにしょっぱいな。グスッ。
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